成人病や生活習慣病の予防・改善のみならず、がんの予防にもアディポネクチンは活躍してくれます。
アディポネクチンを研究している医師が発表したデータでは、がん患者に共通している要素として、血液中のアディポネクチン濃度が低いという結果になりました。つまり、内臓脂肪型肥満などになって、アディポネクチンの分泌量が減少すると、がんを発症しやすい体質になることが伺えます。
体質的にアディポネクチンの分泌量が低い人もがんになりやすく、こうした体質は遺伝するようです。低アディポネクチン血症と診断された人の家族には、両親のどちらか、または両方にがんの病歴がある場合が多いという調査結果もあります。
低アディポネクチン血症の人は、一般的に大腸がんや乳がん、子宮がん、前立腺がん、胃がんのリスクが高まるようです。がんを予防する意味でも、自分のアディポネクチン量を把握しておきましょう。
がんが心配な人や遺伝的にがんを受け継いでいる人、またがん治療中の人は、意識して内臓脂肪を減らし、アディポネクチンを増やすように心がけることが大切です。
主ながんの治療法としては手術療法、放射線療法、化学療法、温熱療法が上げられるでしょう。最近ではこれにアディポネクチンを使った治療が注目されています。
東京大学医学部腫瘍外科の実験によると、ヒトの胃がん細胞をマウスに移植し、がんを発症させた状態のまま、アディポネクチンを投与したところ、最大で90%もがんが減ったという結果も。このことから、アディポネクチンには強い抗がん作用があることが確認されたわけです。
アディポネクチンを直接人間に投与することは、現在の医学では認められておりませんが、研究は日々進化しており、アディポネクチンを増やす物質や同じような作用が期待できる物質を医薬品メーカーがこぞって開発に力を入れています。
また、医薬品ではないので治療効果はありませんが、健康維持のために開発されたアディポネクチンの分泌を高める健康食品やサプリメントも登場しています。
今後の研究・開発次第で、アディポネクチンを応用したがん治療も可能となる日がくるかもしれません。